記事担当:共立プロダクツ
ハンダ付け必須-非マイコン系

「手づくりアンプ」といえば真空管、半導体を問わず「パワーアンプ」に取り組むのが一般的なのですが、中~上級ファンに人気の「プリアンプ」を製作しましたのでご紹介させていただきます。

一昔前(CDプレーヤが登場する前)はFMチューナやフォノイコライザなどの音源機器の出力電圧は200mVくらいが一般的でした。
一方、パワーアンプの入力電圧は2Vくらいが必要です。
というわけで、音源機器の出力電圧を200mVから2Vに10倍くらい増幅してやる必要がありまして、その役割を果たすプリアンプ(前置増幅器)が必須だったのです。

電圧増幅機能にプラスして、音量調整機能(ボリューム)や音質調整機能(トーンコントロール)を合わせ持たせていましたので「コントロールアンプ」とも呼ばれていました。

ところがCDプレーヤ誕生に合わせて音源機器の出力電圧が2V程度に引き上げられたのです。
オペアンプ(演算増幅器)の誕生と低価格化に伴い、音源機器の終段にオペアンプを追加することによってカンタンに出力電圧2Vが達成できるようになりました。

というわけで、プリアンプの必要がなくなり、入力セレクタとボリュームだけで構成された「パッシブコントローラ」を使用するのがピュアオーディオの主流になってきました。
余計なものを排除して「シンプル&ストレート」が実現できるためです。

従来は「パワーアンプ」と「プリアンプ」をひとつのケースに収めたものを「プリメインアンプ」(もしくは「インテグレーテッドアンプ」)と呼んでいたのですが、昨今は「パッシブコントローラ」を「パワーアンプ」のケースに組み込んだ形態が一般的になっています。

では、なぜ今でも「プリアンプ」が必要なのか?と言えば「自分好みの音質を追求できる」ということでしょう。
音源機器とパワーアンプの間に余計なもの(プリアンプ)が入るわけですから「音質劣化するのでは・・・」と思われるのが普通でしょう。
でもアタマで考えるのと実際にやってみるのとは大違いです。
プリアンプを通すと解像度がグッと上がります。
霧が晴れたような音に変身します。
そして「音の彫り」が深くなります。
オーディオ専門誌では評論家の方々が「音の彫琢」という表現をされますが、プリアンプを通した音を聴くと、この意味が理解できる気がします。

パワーアンプに比べてプリアンプはとっつきにくい存在でしたが、共立電子からプリアンプに必要な基板完成品3モデルとプリアンプ用トロイダルコア・トランスが発売されましたので、それらを活用すれば手軽に高音質プリアンプが手づくりできるようになりました。

今回ご紹介させていただくプリアンプの外観はこんなカンジです。
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リアスタイルはこんなカンジです。
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前回、このブログで紹介させていただきました「モノ・パワーアンプ」とデザインを合わせてみました。







プリアンプ製作に使用した主なパーツをご紹介します。

ケースは自作ファンにはおなじみの「タカチ電機」のアルミケースをチョイスしました。

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・品名  HIT型自然空冷小型アルミケース
・品番  HIT23-5-18SS
・価格  ¥7,832-

心臓部になるプリアンプの基板完成品はこんなカンジです。

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・品名  高音質プリアンプ基板完成品
・品番  WP-PAMP8920
・価格  ¥5,500-


音質に定評のある日清紡マイクロデバイス(旧JRC)製オペアンプ「MUSES 8920」が標準装備されています。
オペアンプは8Pのソケットを介して取り付けられていますので、星の数ほど存在するオペアンプを差し替えてそれらの音質を楽しむことができるのがこの基板のいいところ。

それに加えて、ネジ端子で脱着可能なフィードバック抵抗を交換することによりゲイン(利得)を可変することも可能になっています。
ゲイン変更のしかた、抵抗の選び方などは付属の説明書に詳しく記載されています。

プリアンプ基板にDC±12Vを供給する電源基板はこんなカンジです。

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・品名  プリアンプ用±電源基板完成品
・品番  WP-PDEN12VW
・価格  ¥4,400-

電源ON-OFF時の不快なポップノイズを回避するためにミューティング基板も用意されています。
こんなカンジです。
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・品名  プリアンプ用ミューティング基板完成品
・品番  WP-PPRT24V
・価格  ¥3,300-

プリアンプに最適な電源トランスも同時発売されました。
こんなカンジです。

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・品名  プリアンプ用トロイダルコア・トランス
・品番  WP-TT1704
・価格  ¥3,080-

リーケージフラックス(漏れ磁束)やノイズを最少に抑えた高品質なトランスです。


入力を切り替える「セレクター」と音量調整用の「アッテネータ」には「セイデン」製の高信頼・高音質のものを採用しました。
こんなカンジです。

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写真「左」
・品名  Lパッドアッテネータ
・品番  ALAT3210S
・価格  ¥32,000-

写真「右」
・品名  ロータリースイッチ
・品番  32NEG 1-2-6 30°ON
・価格  ¥3,900-

Lパッドアッテネータはどの位置でも音楽信号が通過するのは抵抗2本のみ。
一般的なボリュームと異なり、音質劣化を最小限にとどめます。
抵抗には「アムトランス」社のオーディオ用カーボン抵抗を採用。
音質と操作フィーリングは他では代えがたいものがあります。

ロータリースイッチも同じく「セイデン」製のショーティングタイプを採用。
切り換え時のノイズを防止する構造になっています。




その他、RCAジャックやACジャックなどの周辺パーツは共立エレショップ扱いの中からオーディオ用の高信頼品を選びました。

プリアンプつくりでいちばん大変なのはケース加工ではないでしょうか。
反面、自分のセンスと技量を活かせる楽しい作業でもあります。

フロントパネルの「穴あけ」と「文字入れ」が終わったらこんなカンジです。

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「文字入れ」には「レタリングシートを使用しました。

・品名  レタリングシート
・品番  WP-LS272
・価格  ¥825-

リアパネルの「穴あけ」と「文字入れ」が終わったらこんなカンジです。

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フロントパネルにパーツを取り付けたらこんなカンジです。

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リアパネルにパーツを取り付けたらこんなカンジです。

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アンダーパネル(底板)にヒートシンク(側板)をネジ止めして、トランスを取り付けたらこんなカンジです。

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フロントパネルとリアパネルを取り付けたらこんなカンジです。

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各基板は「ペテット」を使用してアンダーパネル(底板)に取り付けます。
基板にペテットをネジ止めしたらこんなカンジです。
ペテット裏側のシールを剥してアンダーパネルに接着します。

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基板を取り付けたらこんなカンジです。
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この写真ではプリアンプ基板が取り付けられていますが、スペースを有効利用するためにミューティング基板を下にして「二段重ね」にしています。
ミューティング基板を先に取り付けて配線をすませてからネジスペーサを介してプリアンプ基板を取り付けます。
こんなカンジです。

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入出力端子や各基板間の配線はこんなカンジです。

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配線が終わったらこんなカンジです。

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トップパネル(天板)を取り付けたら完成です。
こんなカンジです。

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前回ご紹介させていただきました「モノ・パワーアンプ」と組み合わせたらこんなカンジです。

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高性能&高音質のアンプシステムが完成しました。



音源機器⇒パッシブコントローラ⇒パワーアンプという構成はシンプル&ストレートなのですが、ややもすると「のっぺらぼう」な音に聞こえることがあります。
このプリアンプを通すとスカッと抜けのよい、彫りの深い音に変身させることができると思います。

オペアンプを交換すればさらに自分好みの音を見つける楽しみを増やすことができます。
私はシングルタイプのオペアンプの音が好きなのですが「変換基板」を使えばカンタンに差し替えすることができます。
こんなカンジです。
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・品名  1回路オペアンプ→2回路オペアンプ変換基板完成品
・品番  DUAL-OP
・価格  ¥770-

この写真は「AD797」を装着していますが「OPA627」もベテランマニアには根強い人気があります。
金粉をまき散らしたような華のある高域はOPA627独特の世界だと思います。

この記事を参考にしていただきまして「プリアンプ」の魔力にハマッていただけましたら幸いです。


みなさまも是非、自作アンプで良い音をお楽しみください♪


(記事:OGU)
更新予定:毎週木曜日(次回は12月7日です!)