記事担当:
ハンダ不要-非マイコン系

すっかり冬でございます。
寒くなると外では電飾が増えてきまして、煌めく電飾が心だけでも温めてくれます。
電子部品屋でもこの季節はクリスマス用の電飾などの問い合わせが増えてまいります。
巷ではいろんな電飾が販売されているわけですが、使用場所にぴったりな電飾を自分で作りたいというニーズも健在なのでございます。

と言う訳で本日は。
一度基本に立ち返ってLEDの点け方を解説してみようかと思います。

LEDの点灯と言うと、俗に『Lチカ』などと呼ばれておりまして、電子工作やマイコンの実験では一番最初に行われることが多い、いわばはじめの一歩的な工作でございます。
そのため、LEDを点灯すると言うと「何を今更そんな初歩の初歩を」と言われかねないのですが、だからこそ恥ずかしげもなく詳細に解説するサイトは少ないのではないかと思った次第でございます。
これから電子工作を始める初心者の方、また、ただLEDを光らせたいだけで電子工作には全く興味がない方のために、解説を書いてみようかと思った訳でございます。

はい、言い訳完了。

と言う訳で必要な部材を用意しました。

L_chika01
使用する電源は★モバイルバッテリー
でございます。
最近は乾電池よりも充電して繰り返し使えるモバイルバッテリーが主流になってきております。
スマホ用の充電器として個人でも複数所持していることも多く、身近な電源としてその地位を確立していると言えるのではないでしょうか。

あとはLED抵抗と、ブレッドボードを用意いたしました。
今回はどちらかと言うと実践ではなく考え方の解説ですので、色々と楽なブレッドボードを使用させていただきます。

ちなみに。
このエレショップブログでも何度か解説しておりますが、ブレッドボードというのは部品を挿すことのできる穴が沢山空いた板のことでございます。
この穴は板の中でつながっていて、部品通しをつないで回路を作ることができるのでございます。
L_chika03-2
今回使用するブレッドボードは↑のように穴がつながっております
上下に電源ライン用のスペース(赤と青の線部分)があり、真ん中に回路作成用のスペース(緑の線部分)がございます。

ではまずは電源用の回路を作成いたしましょう。
電源入力に使用するのはブレッドボードに挿せるDCジャックでおなじみの★「20V 4A 高電圧高電流対応φ2.1mm DCジャック基板型/スイッチ付 / 18742」でございます。
このDCジャックを回路用のスペースに挿し、電源用ラインにつなぎます
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ちなみにこの「18742」は足が3本生えていますが、使用するのは真ん中の2本でございます。
L_chika04 L_chika04-2
3本の内お尻から出ている端子がDCプラグのセンターに、本体中央の端子がDCプラグの外側につながっております。
今回はセンタープラスのケーブルを使用致しますので、お尻から出ている端子をブレッドボードの+ラインに、真ん中の端子を-ラインにつなぎます
ブレッドボードの穴同士をつなぐ際は★ジャンパー線と呼ばれる硬い電線でつなぎます。

ではちゃんと電気が供給されているか確認してみましょう。
L_chika06
はい、モバイルバッテリーから出力されたDC5Vがちゃんと確認できました
これで電源の用意は完了でございます。

では本日のメインイベント。LEDを光らせていきましょう。

まずはこの3色。
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★黄★赤★緑の一般的な着色タイプLEDでございます。

LEDを点灯させるときに気をつけないといけないことがございます。
 1.電圧に気をつける
 2.極性に気をつける
以上の2点でございます。

まず電圧
これは商品ページやデータシートなどに記載されている『順電圧』『順方向電圧』と呼ばれるものでございまして、『Vf』と記号で書かれている場合もございます。
エレショップでは↓の赤で囲んだ部分がソレでございます。
L_chika08
考え方としましては、この順方向電圧に書かれている電圧をLEDにかけるとLEDが光る、と言った具合でございます。
この電圧より高い電圧をかけるとLEDが壊れる可能性が高くなりますし、この電圧より低い電圧だと光らない可能性がございます。
なので、LEDを光らせるときはこの『順方向電圧』として示されている電圧をかけるようにしましょう。

今光らせようとしている黄・赤・緑のLEDは、順方向電圧が2.1Vでございます。
しかしモバイルバッテリーから出力される電圧は5Vなので、これでは電圧が高すぎてLEDが壊れてしまいます

ではどうするか。

はい、抵抗で電圧を落とすのです。

そうは言っても抵抗も種類が多く、どれを使えば良いのかわかりませんよね。
抵抗値も0から100万(1M)Ω以上まであって、目眩がしてきます。

こういうときに使用するのが『オームの法則』でございます。

文系人間からすれば『〇〇の法則』と聞くだけでアレルギーが出てきてしまうものですが、そういう人は『マーフィーの法則』でも読んでアレルギーを軽くすると良いと思います。
『オームの法則』と偉そうに言っておりますが、やっていることは小学校の算数レベルなのでご安心ください。

今回は詳しい内容は省いて、使い方だけをお教えいたしますのでご安心を。

では『オームの法則』使って必要な抵抗の値を求めてみましょう。

使用する式は『R=V/I』
英字使われるだけで拒否反応が出てしまいますね。
なので日本語に直しましょう。

 電圧÷電流=抵抗

ついでに書き方も算数みたいに直しました。
そう、電圧を電流で割ると必要な抵抗の値が計算できるんです。

「なんで?」と言う疑問はひとまず置いといてください。こう言うもんだと憶えてください。
「なぜハサミはモノを切れるのか」を理解せずともハサミで紙を切ることはできるでしょう?
『法則』とか『公式』もただの道具なので、使い方を覚えていれば十分です。

では実際に計算してみましょう。
この『オームの法則』の公式にも注意点があります。
 1.電流の単位は『A(アンペア)』
 2.ここで言う『電圧』は『落としたい電圧』のこと
以上2点。
1は間違えやすい点。2は勘違いしやすい点でございます。

まず1の電流について
今回使用するLEDは20mAの電流を消費します。
商品ページやデータシートでは『If』と書かれている部分でございます。
オームの法則では『A』が基本単位になっておりますので、『mA』のままでは使用できないのでございます。
と言う訳で『20mA』を『A』に直しましょう
 1000mA=1A
なので、
 20mA=0.02A。
となります。

次に電圧
これは電源の電圧でもLEDの順方向電圧でもありません。
抵抗で落としたい電圧のことでございます。
今回はモバイルバッテリーの5VをLEDに最適な2.1Vにしたいので、
 5-2.1=2.9
となります。
今回オームの法則に放り込む電圧の値は『2.9V』でございます。

では計算しましょう。
 電圧÷電流=抵抗
なので
 2.9÷0.02=145
となります。
と言う訳で必要な抵抗の値は『145Ω』でございます。

しかしここでまた問題が。

『145Ω』と言う抵抗はラインナップにないんですね。
(エレショップで取り扱いのある抵抗一覧はこちら)

こういう時は多い方で近い値を選びましょう
抵抗値が大きい分にはLEDを壊すこともないので。

と言う訳で今回は150Ωの抵抗を使用します。
L_chika09
早速ブレッドボードに組んでみます。

が、ここで
LEDを点灯させるときに気をつけないといけないこと『2.極性に気をつける』が出てきます。

LEDには極性、プラス側とマイナス側がございますので、電源のプラス側にはLEDのプラス側を、電源のマイナス側にはLEDのマイナス側を接続してください。
ちなみにLEDの足の長い方がプラス側でございます。
L_chika10
抵抗はLEDに直列につなぎます。
回路としてはこんな感じでつながっております。
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早速電源をつないでみます。
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はい、無事点灯いたしました

同じ要領で黄色と緑もつないでみましょう。
L_chika13
こんな感じ。
いわゆる『並列』に接続しております。
回路的には↓こんな感じ。
L_chika14
LEDを複数同時に点灯させたい場合は『並列』に接続することが重要でございます。
LEDを複数つなげたけど光らない場合は、だいたい直列、つまりまっすぐ数珠繋ぎに並べてつないでしまっている場合が多いようです。
直列につないでしまいますと、単純に順方向電圧が足されていきますので、電源の電圧が全然足りなくなってしまうんですね。
今回の例ですと順方向電圧2.1VのLEDが3個ありますので、
 2.1×3=6.3
と、最低でも6.3Vの電圧が必要になるのです。

並列につなぐと各LEDごとの計算になるので、LEDごとに抵抗を入れれば問題がないというわけでございます。

と言う訳で。
L_chika15
はい、3個とも光りました

では続いて、順方向電圧がちょっと高い★青★白のLEDを光らせてみましょう。
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青や白、一部の緑などは順方向電圧が3V以上有ったりします。
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なので赤や黄色と同じ抵抗を入れるとちょっと電圧が下がりすぎてしまうんですね。
なので必ずLEDに合わせて抵抗値を計算するようにしましょう。

今回は5Vを3.1Vにしたいので、
 5-3.1=1.9
となり、1.9V落とす必要がございます
今回使用する青と白のLEDも、必要な電流は20mAなので、オームの法則に当てはめて
 1.9÷0.02=95
となります。
今回も95Ωの抵抗はないので、大きい方で近い値として100Ωの抵抗を使用します
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今回はいっぺんに青と白をブレッドボードにつなぎました。
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回路は赤とか黄色の時と同じです。
違うの抵抗の値だけ。
もちろん電源を繋げば
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ちゃんと点灯いたします。

さて、赤や黄色を点灯させた時に『並列につなぐと各LEDごとの計算になるので、LEDごとに抵抗を入れれば問題がない』と書きました。
つまり並列に接続すれば、順方向電圧の違う青や白と赤や黄色が混ざっても、問題なく点灯させることができます。
L_chika21 L_chika22
こうして各LEDに抵抗をつければ色んな色のLEDを一つの電源で点灯させることができるのでございます。


みなさんもぜひ自作の電飾を作ってみてくださいね!




と、いつもならここで終わるのですが。
感の良い人はすでに気付いたかも知れません。

『直列につないでしまいますと、単純に順方向電圧が足されていきますので』と書いた時、電源電圧が5Vなら、青色等の3V系と赤色等の2V系を直列にしたら抵抗いらないんじゃね?

つまりはこういうことですな。
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回路的にはこう↓
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ええ、もちろんこれでも光りますよ。
L_chika25
単純な足し算ですからね。

例えば電源が12Vだった場合、3Vの青色LEDを4個直列にしたら抵抗いらないんじゃ・・・とか思いますよね。
正解ではないですが間違いでもないんです。電子工作警察には怒られますけど。

実際LEDってキッチリ順方向電圧かけないと光らないってわけでもなくて、多少電圧が増減しても光ります。
ただ、LEDにも個体差があり、どの範囲の電圧で使用できるかは明言できないので、データシート通りの電圧をかける方が間違いがございません。
それに、LEDというのは壊れやすい部品ですので、ちょっと電源が揺らいだだけでいずれかのLEDが壊れ、結果そこに直列につながるLED全てが壊れてしまうこともあるのです。
抵抗はLEDよりは頑丈ですので、電圧の調整は抵抗でするのが基本となる訳でございます。

電気・電子と言うと難しく聞こえますが、結構アバウトなところもあるので、恐れず色々と試していただければと思います。
 

(記事:伊東)
更新予定:毎週木曜日(次回は12月16日です!)